世界40万人ET探し

米天文学者が呼びかけ
探査ソフト無料配布

あなたも第一発見者になれる!?

「あなたもET(地球外知的生命体)探しに参加しませんか」――」米国天文学者らによるET探しの呼びかけに、世界中から四十万人ものパソコンユーザーが応じ、大きな反響を呼んでいる。この計画は、インターネットでつながった多数のパソコンを動かしてスパコンの役割をさせ、ETからの微弱なシグナルを見つけ出そうというもの。十七日から探査ソフトの無料配布も始まり、「第一発見者になれるのでは」という天文ファンの夢は止めどなく広がっている。(高橋 真人)

 このソフトは米カリフォルニア大学バークリー校の「知的文明探査研究所」(SETI)が開発したもの。 同研究所などのホームページにつないでソフトをダウンロードするだけで、データが送付され、その中から ETが発した可能性のある強い信号や繰り返しなどの異常信号を検出する。
 パソコンが使われていない「空き時間」に作動し、使い始めると停止する。パソコン所有者がコーヒーを飲んだり眠っている間にパソコンがET探査に貢献してくれるわけだ。
 観測データは、ほかの惑星から発せられる微弱な信号を観測しているプエルトリコのアレシボ天文台にある世野最大の電波望遠鏡(直径約三百メートル)から送られてくる。検出作業が終わるとまた自動的に結果を同大学に送信し、次の電波データが配信される。
 同天文台にもスパコンがあるが、毎秒二千億回の計算しかできず、膨大なデータを恒常的に分析するのは不可能。そこで、科学者チームは電波信号をくまなく分析するため、一般の人々のパソコンを十万台規模以上で利用することを考案した。「インターネットでつないだ一万台のパソコンが動くだけでも、前例のない超高性能スパコンになる」という。
 一回に送られるデータ量の分析は少なくとも連続で二十四時間かかるため、平均的なパソコン利用者なら分析が終わるまで数日間かかる。作業が終わると、データから何かが見つかったか教えてくる。同研究所に送り返されてくる結果に異常があれば、スパコンで詳細に分析する。
 実験は二年間続けられ、進み具合や結果はホームページに掲示される。担当チームの主席研究員を務める同校のダン・ワージマー博士は「ETが見つかる可能性は、わずかながらも実際にある。発見者の名前は歴史に残るし、私と一緒にノーベル賞を受賞することになるだろう」という。
 この計画について、渡部潤一・国立天文台広報普及室長は「一般のパソコンユーザーにこのような形で協力を求めれば、参加者意識や満足感を持ってもらえ、コンピューターの性能の限界をカバーする意味でも、理解者を増やすという意味でも最高の方法だ。盲点を突かれた感じで、よくここに着目したと思う。中学や高校の天文クラブの活動などにはうってつけではないか」と話している。
 ソフトは、惑星教会(http://planetary.org)か、同研究所(http://setiathome.ssl.berkeley.edu)で入手できる。


©読売新聞 1999年5月19日