大江戸神仙伝

石川英輔さん
 緻密な時代考証に基づき江戸を題材にした小説をたくさん書いていらっしゃるかたです。
 現代の東京から150年前の江戸時代にタイムスリップした男性が江戸の暮らしを楽しむ 「大江戸神仙伝」シリーズはとってもおもしろい作品です。粋で侠(きゃん)で愛くるしい辰巳芸者の いな吉という人が出て来るんですが、彼女がかわいいんですとっても。わたしよりも5歳も年下なん ですけど、こんなにいい女性がほんの2世紀ほど前まではこの日本にもいたんですね。
 小説を楽しみながら、江戸の細かい部分まで勉強になります。4冊読めばあなたも立派な江戸っ子通になれるでしょう。ためらうことなくお薦めします。

大江戸神仙伝シリーズ(講談社文庫)

大江戸神仙伝
シリーズ第1作。中年の科学ジャーナリストがある日恋人の目前で文政時代の江戸にタイムスリップ。持ち前の科学知識を発揮してなんとか窮地を脱した彼は、小粋な深川芸者いな吉と深い仲になり、江戸の暮らしを堪能する。綿密な考証に基づいて、現代人が持っている江戸に対する誤った認識を正してくれるばかりでなく、これからの日本のありようまで鋭く問いかけてくる。この本を読むと、きっとあなたも江戸が好きになり、江戸に行きたくなりますよ。そして、いな吉のことが心配になるはずです。

大江戸仙境録
なんと江戸から現代の東京へタイムスリップをしている女性が登場! 物語はがぜん展開を見せてゆきます。ラストでは涙が止まりませんでした。

大江戸遊仙記
シリーズ第3作は、江戸の物見遊山がテーマ。常に自然と向き合って暮らさざるを得なかった江戸の人々ですが、なんといってもレジャーの筆頭が物見遊山。豊かだった江戸の自然を愛で風流を楽しむ、平和で文化が爛熟しきった時代ならではの遊びです。いな吉姐さんといっしょに江戸の名所に行きませんか?

大江戸仙界紀
ここまできたらあとはもう、いな吉を現代の東京に連れてくるしかありません(笑)。いな吉と江戸時代の熱海への旅を満喫したと思ったら、いきなりいな吉が東京に! 芸者姿のいな吉がミニスカートに変身! でも東京の汚れた空気はいな吉にはかわいそうすぎます。ラップランドからやってきたいちごのよう… 続きはどうぞお読みになってください。

大江戸仙女暦(「いな吉江戸暦」改題)
転時能力には不安定な要素があるらしく、この前江戸をあとにしたときよりも5年ほど昔に再び舞い戻ってしまった主人公。当然、いな吉姐さんも16歳という初々しさ。芝居町で顔見世を見たり、冬の大川に舟を浮かべて白魚漁を見物したり、新年の寺社詣でにつき合ったり、春になれば桜草を眺めに遠出したり…いな吉を喜ばせるためだったら、どこへでも連れていってくれます。
それにしても江戸の自然の美しさ。ほんの百数十年前までこういう暮らしをしていたなんて、わたしたちは経済的繁栄の代わりに、美しく貴重なものを失ってしまいました。
新井素子さんの解説(文庫本)も絶妙です。
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